Broderie au Point de Lunéville

「Broderie au Point de Lunéville(ポワン・ド・リュネビル)」は、1810年頃、フランス・ロレーヌ地方にあるリュネビルという街で誕生した刺繍技法です。

コットンチュールと呼ばれる布地に、「Crochet de Lunéville(クロシェ・ド・リュネビル)」と呼ばれる かぎ針状の特殊な針と、コットン糸を使って刺繍します。
レースのような模様を描くように刺繍するのが特徴で、洗礼式のドレスや、ウェディングベール、ドイリーなどに用いられていました。
布地と糸はBlanc(白)かEcru(生成色)を限定して用いることから、「Blanc Lunéville」とも呼ばれていたそうです。
ロレーヌ地方では、各家庭で母から娘へ伝えられるほど深く根付いていた刺繍技法でしたが、第二次世界大戦の影響や刺繍の機械化が進んだことなどにより、1940年代にはほぼ姿を消しつつありました。

しかしながら、1998年に刺繍学校「Conservatoire des Broderie de Lunéville」が開校したことで消滅の危機を免れ、現在も大切に受け継がれています。
この技法名称と技術は、フランス産業財産庁(INPI)に登録および保護されており、
また2020年には、ユネスコ無形文化遺産にも指定されています。

リュネビル城の一角にあるこの刺繍学校は、世界で唯一「ポワン・ド・リュネビル技法」が学べる場として受講生を受け入れており、私もこれまでに2度訪れ、技術を習得させていただきました。
Conservatoire des Broderies de Lunévilleちなみに、このポワン・ド・リュネビル技法から派生し、後に誕生したのが 「Broderie perlée pailletée de Lunéville (クロシェ針でビーズとスパンコールを縫い付ける技法)」で、この2つの技法は明確に区分されています。
※Broderie perlée pailletée de Lunéville (クロシェ針でビーズとスパンコールを縫い付ける技法)については、こちらをご覧ください。
https://lebonmiel.jp/la-technique-du-crochet-de-luneville/

また、私が刺繍学校「Conservatoire des Broderie de Lunéville」に留学した際(2013年)に受けた説明では、「 Broderie de Lunéville(リュネビル刺繍)」は、このポワン・ド・リュネビル技法のみに限定されるとのことでしたが、現在は以下2つの技法を指すとのことです。

[Les broderies de Lunéville (リュネビル刺繍)]
・ Broderie au Point de Lunéville
 (クロシェ針で、コットンチュールにコットン糸で刺繍する技法)
・Broderie perlée pailletée de Lunéville
 (クロシェ針で、ビーズとスパンコールを縫い付ける技法)