Point de Lunéville

今回は、フランスの刺繍学校「Conservatorie des Broderie de Lunéville」についてのお話を。 私が初めてConservatorie des Broderie de Lunévilleを訪れたのは、今から6年前のこと。 この刺繍学校は、フランス・ロレーヌ地方の「リュネビル」という町にあります。

リュネビル刺繍学校Château de Lunéville(リュネビル城)。 ロレーヌの”プチ・ヴェルサイユ”とも呼ばれています。
刺繍学校「Conservatorie des Broderie de Lunéville」は、このお城の一角にあります。

  この刺繍学校では、「Point de Lunéville」と呼ばれる技法を学ぶことができます。
Point de Lunévilleとは、コットンチュールに、糸とクロッシェ針(かぎ針)を使って刺繍する技法。
1810年に リュネビルの地で誕生し、「リュネビル法の原点」と言われている技法です。

リュネビル刺繍学校リュネビル城の庭園

このPoint de Lunéville技法は、刺繍学校「Conservatorie des Broderie de Lunéville」でしか学ぶことが出来ません。
伝統を重んじるロレーヌ地方で、今でも大切に守られている技法で、技法習得後の取り扱いも、とても厳しく制限されています。
第三者に技法手順が伝わってしまうような全ての行為、また、許可なく あらゆる場面で技法作品を掲載・展示するなどの行為を固く禁止しており、誓約書へのサインも必要となります。

Point de Lunéville技法の取り扱いについては、よくご質問を頂戴するのですが、もし留学をお考えの場合は、学校の規定をよく理解した上で、受講申し込みをする必要があるかと思います。
詳細をお知りになりたい場合は、直接 学校に問い合わせてみて下さい。
(問い合わせや授業は、全てフランス語となります。)

リュネビル駅

リュネビル駅

学校では技法だけでなく、クロッシェ針を使用する刺繍の名称(呼び方)なども丁寧に教えて下さいました。 (この件については、また機会がある時にお話しさせていただきます)

技法発祥の地を肌で感じられたことはもちろん、ぼんやりとしていた知識が明確になった事も沢山あり、
とても勉強になりました。

自身の刺繍教室を開く前に、どうしても訪れておきたかったリュネビルの町。
リュネビルでの経験を得た上で、生徒さんを迎え入れることが出来て、本当に良かったと思っています。  

リュネビル刺繍学校学校のすぐそばを流れている川。 この川を眺めながら、のんびりお昼ご飯を食べたりしました。

ちなみにリュネビルは刺繍だけでなく、「リュネビル焼」と呼ばれる陶器も有名。
たまたま、城内でリュネビル焼のイベントを開催していたので、授業の合間に見学に行きました。


1700年代に誕生したと言われるリュネビル焼。 お花(特にチューリップ)や鶏など自然のモチーフが多く描かれていて、優しく可愛らしい雰囲気の陶器が沢山展示されていました。

ロレーヌ地方の人々は、お客様をおもてなしする時や、ちょっとしたディナー・ティータイムの時などは、現在でもリュネビル焼を使用し、その時間を楽しむそう。
刺繍も陶器も、この地の人々の ”伝統を大切する心”が ひしひしと伝わってきて、とても素敵だなと感じました。  

刺繍の話に戻すと、実は 2003年にリュネビル城は火災に遭い、大きな損傷を受けました。
このため、刺繍学校も閉鎖を余儀なくされたとのことですが、大変な時期を乗り越えながらも再開し、
今日に至っています。
このことからも、伝統技術を大切に継承しようとする心が 良く伝わってきます。

そんな心があるからこそ、伝統ある貴重な技法を教えていただけたのだと、心から感謝。
この地の人々の  ”伝統を重んじる心”  から学んだことを、大切にしたいと思っています。

リュネビルの教会学校近くにあるサン・ジャック教会(Église Saint-Jacques de Lunéville)。 とても素敵な教会です。

帰国後、技法を忘れないようにと練習していくうちに、この技法の魅力にどんどんハマっていきました。
そして、また訪れたいという気持ちが強くなり、2年前に再度リュネビルへ。
新しい技法をさらに習得してきました。

リュネビル刺繍学校教室教室からの風景。 2度目の訪問も、充実した時間を過ごすことが出来ました。

久しぶりに訪れたリュネビルの町は、ほとんど変わっていなくて、のどかな時間が流れていました。

教室内は少しリニューアルされたようで、以前よりも綺麗になっていました。
先生や学校スタッフの皆さんも、変わらずお元気。
その時に、同じく勉強に来ていた生徒さん達とも仲良くなれて、楽しい時間を過ごしました。

2度目の勉強後も、少しづつですが、新しく習った技法を使って、Point de Lunévilleでの刺繍制作を楽しんでいます。

前述した通り、制作過程や作品を この場で公表することはNGなので、お話だけとなりますが、
立体の蝶々やお花を刺繍しています。
お花の刺繍は、パンジー・カトレアなど。
普通の4枚・5枚などの同じ花弁よりも、それぞれの花弁に特徴のあるお花の方が、Point de Lunéville技法が活きるような気がして。
さらに 立体刺繍にすることで、もっとこの技法が映えるかなと。

蝶々は、羽の刺繍が全て出来上がり、あとは組み立てのみですが、胴体をどうするか悩んで 早1年・・。
ビジューで仕上げるのも良いかもしれませんが、この技法ではやっぱり胴体も糸で仕上げる方が良い気もしています。
あれこれ楽しく思案中です^^。